【2025年】住宅ローン控除の年末調整:新方式「調書方式」の導入と影響

目次

エグゼクティブサマリー

令和4年度税制改正により、住宅ローン控除の年末調整手続きに新たな「調書方式」が創設されました。これは、従来の金融機関から交付される紙の証明書を提出する「証明書方式」と並行して運用されます。令和6年以降の居住者が対象となり、最初の適用は令和7年分の年末調整となります。

主な変更点

この変更による最も重要な点は以下の通りです。

  • 二方式の混在
    令和7年分の年末調整では、令和6年居住者を対象として、金融機関のシステム対応状況により「証明書方式」と「調書方式」が混在する。
  • 提出書類の簡素化
    「調書方式」では、金融機関から税務署へ直接年末残高データが提出されるため、従業員は勤務先に「年末残高等証明書」を提出する必要がなくなる。
  • 主要書類の交付時期の差異
    年末調整に必須の「証明書兼申告書等」の交付時期が、証明書方式(10月頃)に比べ調書方式(11月中旬頃)の方が遅くなる見込みである。

この移行期間において、企業および給与所得者は、自身がどちらの方式に該当するかを把握し、それぞれの手続きと必要書類、スケジュールを正確に理解することが不可欠となります。

動画解説

1. 住宅ローン控除における2つの方式の概要

住宅ローン控除を2年目以降に年末調整で受ける際の手続きとして、従来の「証明書方式」に加え、新たに「調書方式」が導入されました。

従来の「証明書方式」
給与所得者が金融機関から紙の「年末残高等証明書」の交付を受け、それを年末調整の際に勤務先に提出する従来の方法。

新設された「調書方式」
令和4年度改正で創設され、令和6年以後の居住者から順次適用が開始される新しい方式。この方式の仕組みは以下の通り。
データ連携:
 借入先の金融機関等が「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書」を税務署に直接提出する。
・情報提供:
 国税当局が、マイナポータル等を通じて納税者(給与所得者)に住宅ローンの「年末残高情報」をデータで提供する。
・証明書不要:
 金融機関等から紙の「年末残高等証明書」は交付されない。

2. 令和7年分年末調整における混在状況

令和7年分の年末調整は、新方式への移行期にあたる。特に令和6年に居住を開始した者が、初めて年末調整で住宅ローン控除の適用を受ける年となるため、以下の通り2つの方式が混在する状況が生まれます。

  • 対象者: 令和6年に居住を開始した給与所得者。
  • 方式の決定要因: 借入れを行った金融機関等が、調書方式への移行に必要なシステム改修を完了しているか否かによる。
    ◦ システム改修済の金融機関: 「調書方式」が適用される。
    ◦ システム改修が未了の金融機関: 引き続き従来の「証明書方式」で対応する。

このため、令和6年居住者については、年末調整の手続きが個人によって異なることになります。

3. 年末調整における提出書類の差異

適用される方式によって、令和7年分の年末調整で勤務先に提出する書類が異なる。いずれの方式でも、控除適用初年度の確定申告は必要となる。

方式提出が必要な書類備考
証明書方式・「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書及び給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書」(以下「証明書兼申告書等」
・金融機関発行の「年末残高等証明書」
従来通りの手続き。
調書方式・「証明書兼申告書等」のみ・「証明書兼申告書等」は、所轄税務署から交付される時点で、控除証明書左下の「住宅借入金等の年末残高に関する事項」欄に年末残高情報があらかじめ記載されている。
・控除申告書の備考欄に「調書方式に対応する金融機関からの借入れである旨」を記載して提出する必要がある。

4. 「証明書兼申告書等」の交付方法と時期

両方式で必要となる「証明書兼申告書等」は、控除適用初年度の確定申告時に、納税者が交付方法を選択できます。また、選択した方式によって交付時期の目安が異なります。

交付方法の選択

以下のいずれかを選択する。

  • 書面交付: 所轄税務署から紙で複数年分が一括して交付される。
  • 電子交付: e-Tax経由でデータが毎年交付され、e-Taxメッセージボックスに格納される。

方式による交付時期の違い

証明書方式の方が、調書方式に比べて若干早く交付される傾向がある。ただし、記載の時期はあくまで目安であり、前後する可能性がある。

方式交付方法交付時期の目安
証明書方式電子交付毎年10月頃
書面交付入居2年目の10月下旬頃(一括送付)
調書方式電子交付毎年11月中旬頃
書面交付入居2年目の11月下旬頃(一括送付)

ガイド:Q&A

1. 令和4年度改正で創設された住宅ローン控除の「調書方式」とはどのような制度ですか?

「調書方式」とは、金融機関が税務署に「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書」を提出し、それに基づき国税当局がマイナポータル等を通じて納税者に「年末残高情報」をデータで提供する方式です。これにより、納税者は金融機関からの紙の証明書なしで控除手続きが可能になります。

2. 令和7年分の年末調整において、なぜ「証明書方式」と「調書方式」が混在する状況が生まれるのですか?

令和6年以後の居住者から調書方式が適用されますが、一部の金融機関ではシステム改修が完了しておらず、従来の証明書方式を継続するためです。その結果、令和6年居住者が初めて年末調整を行う令和7年分において、両方の方式が混在することになります。

3. 住宅ローン控除を受ける給与所得者は、控除適用の1年目に何をしなければなりませんか?

給与所得者が住宅ローン控除を初めて適用する場合、1年目には必ず確定申告を行う必要があります。2年目以降から年末調整での控除が可能となります。

4. 「調書方式」の場合、勤務先に提出する「証明書兼申告書等」にはどのような特徴がありますか?

「調書方式」の場合、所轄税務署から交付される「証明書兼申告書等」には、控除証明書左下の「住宅借入金等の年末残高に関する事項」欄に年末残高情報があらかじめ記載されています。

5. 「証明書方式」で年末調整を行う場合、勤務先に提出が必要な書類は何ですか?

「証明書方式」では、勤務先に「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書及び給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書」(証明書兼申告書等)と、金融機関から交付される「年末残高等証明書」の2点を提出する必要があります。

6. 「調書方式」において、金融機関から納税者に直接交付されなくなる書類は何ですか?

「調書方式」では、金融機関等から紙の「年末残高等証明書」は交付されません。代わりに、年末残高に関する情報は国税当局からデータで提供されます。

7. 「証明書兼申告書等」の交付方法には、どのような選択肢がありますか?

控除適用初年度の確定申告時に、2つの選択肢があります。e-Tax経由で毎年データを交付してもらう「電子交付」か、所轄税務署から複数年分を紙で一括交付してもらう「書面交付」のいずれかを選択できます。

8. 「証明書兼申告書等」の交付時期について、「証明書方式」と「調書方式」ではどのような違いがありますか?

交付時期は証明書方式の方が若干早く、電子交付の場合は10月頃、書面交付の場合は入居2年目の10月下旬頃が目安です。一方、調書方式は電子交付が11月中旬頃、書面交付が11月下旬頃が目安となります。

9. 「調書方式」で控除申告書を提出する際、備考欄に記載すべき内容は何ですか?

「調書方式」で「証明書兼申告書等」を提出する際には、控除申告書の備考欄に「調書方式に対応する金融機関からの借入れである旨」を記載する必要があります。

10. 全ての金融機関が「調書方式」に対応しているわけではありませんが、未対応の金融機関から借入れを行った場合、納税者はどのように対応しますか?

調書方式への移行に必要なシステム改修等が完了していない金融機関等から借入れを行った場合は、令和6年以後の居住者であっても、引き続き従来の「証明書方式」で年末調整の手続きを行います。

主要用語集

用語解説
住宅ローン控除正式名称は「住宅借入金等特別控除」。給与所得者などが住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に、所得税の控除が受けられる制度。
調書方式 (ちょうしょほうしき)令和4年度改正で創設され、令和6年居住分から運用が開始された新しい方式。金融機関が税務署に年末残高を報告し、国税当局が納税者にデータを直接提供する。
証明書方式 (しょうめいしょほうしき)従来の方式。金融機関から交付される紙の「年末残高等証明書」を納税者が勤務先に提出して控除を受ける。
年末調整 (ねんまつちょうせい)給与所得者の1年間の所得税額を年末に確定させ、源泉徴収された税額との過不足を精算する手続き。
住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書調書方式において、借入先の金融機関等が税務署に提出する、住宅ローンの年末残高を記載した書類。
年末残高情報 (ねんまつざんだかじょうほう)調書方式において、国税当局からマイナポータル等を通じて納税者にデータで提供される住宅ローンの年末残高に関する情報。
年末残高等証明書 (ねんまつざんだかとうしょうめいしょ)証明書方式において、金融機関等が発行する、住宅ローンの年末時点での残高を証明する紙の書類。
証明書兼申告書等 / 控除申告書等正式名称は「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書及び給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書」。年末調整で控除を受けるために勤務先に提出する主要な書類。
電子交付 (でんしこうふ)「証明書兼申告書等」を、e-Tax経由で毎年データとして受け取る交付方法。
書面交付 (しょめんこうふ)「証明書兼申告書等」を、所轄税務署から複数年分まとめて紙の形式で受け取る交付方法。
マイナポータル政府が運営するオンラインサービス。行政手続の検索や電子申請、自己情報の確認などができる。
e-Tax (イータックス)国税電子申告・納税システム。インターネットを利用して国税に関する申告や納税、申請・届出等の手続ができる。
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