エグゼクティブ・サマリー
イオン株式会社は、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念を根幹に据え、「持続可能な社会への貢献」と「グループの成長」の両立を目指すサステナビリティ経営を推進している。その戦略は、事業との関連性と社会への影響度を基に特定された7つの重点分野(マテリアリティ)を柱として構築されている。
気候変動対応においては、「イオン脱炭素ビジョン」を掲げ、2040年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロにするという長期目標を設定している。2030年の中間目標であった店舗使用電力の50%再生可能エネルギー化は、2023年度に55%を達成し、7年前倒しで実現した。1.5℃および4℃シナリオ分析を通じて、炭素価格導入によるコスト増(最大353億円)やエネルギー価格高騰(最大1,099億円)などのリスク、および脱炭素エネルギー導入によるコスト削減(最大218億円)などの機会を定量的に評価し、戦略の強靭性を高めている。
人的資本経営では、「教育は最大の福祉」という考えに基づき、従業員の自律的な成長を最重要課題と位置づけている。2024年度には60億円の教育投資を行い、デジタル人材の育成(2025年度目標2,000人)や次世代経営人材の育成を強化している。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進も重点項目であり、女性管理職比率50%、障がい者雇用率3.5%という具体的な目標を掲げている。連結ベースでの女性管理職比率は28.4%に達している。一方で、正規雇用労働者における男女間の賃金差異(女性の賃金が男性の79.4%)などの課題も認識しており、その要因を分析し、是正に向けた取り組みを継続する方針である。
本記事は、同社の2025年2月期有価証券報告書に基づき、サステナビリティと人的資本に関する戦略、具体的な取り組み、指標と目標を網羅的に分析・整理したものである。
解説動画(簡略版:約6分)
1. サステナビリティに関する基本理念とガバナンス
イオンのサステナビリティ活動は、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念に基づいている。この理念は定款にも記されており、ガバナンスの基本的な考え方としても位置づけられている。循環型かつ持続可能な経営を実践し、「持続可能な社会への貢献」と「グループの成長」の両立を目指す。
ガバナンス体制としては、指名委員会等設置会社を選択し、迅速な意思決定を可能にしている。サステナビリティに関する重要事項は、代表執行役をはじめとする経営幹部で構成される経営会議「イオン・マネジメントコミッティ」で議論・決議され、取締役会がその職務遂行を監督する体制となっている。
2. サステナビリティ戦略:7つの重要分野(マテリアリティ)
経営戦略の一環として、事業との関連性と社会への影響度の観点から、以下の7つの重点分野(マテリアリティ)を特定し、取り組みを推進している。
| 重点分野(マテリアリティ) | 主な取り組み及びマイルストーン |
| 脱炭素社会の実現 | ・「イオン脱炭素ビジョン」に基づき、店舗、商品・物流、顧客と共に温室効果ガス排出削減に取り組む。 ・2040年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロ化。 |
| 資源循環の促進 | ・2030年までに使い捨てプラスチック使用量を50%削減(2018年比)。 ・PB商品で環境・社会に配慮した素材を使用。 ・2025年までに食品廃棄物を50%削減(2015年比:発生原単位)。 |
| 生物多様性の保全 | ・持続可能な調達原則に基づき、農産物、畜産物、水産物、紙、パーム油、カカオ、コーヒー等で持続可能性に配慮した商品の調達を推進。 ・「イオンの森づくり」等の植樹活動や、生態系に配慮した店舗開発を推進。 |
| コミュニティとの協働 | ・「イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン」「こども食堂応援団」等を通じ、顧客や地域住民と共にコミュニティの発展に貢献。 |
| 人権に配慮した公正な事業活動 | ・「イオンの人権基本方針」に基づき、サプライチェーン全体で人権デュー・ディリジェンスを実施。 ・全従業員を対象とした人権研修を毎年実施。 ・「お取引先さまホットライン」「イオンコンプライアンスホットライン」を設置。 |
| 従業員の幸せの実現 | ・「教育は最大の福祉」の考えに基づき、自律型人材の育成と能力を最大限に発揮できる教育環境を整備。 ・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)、健康経営、エンゲージメント向上を推進。 |
| 攻めと守りのガバナンス | ・指名委員会等設置会社として、過半数を社外取締役とすることで経営の監督機能を強化。 ・基本理念を定款に明記し、ガバナンスの基盤とする。 |
3. 気候変動への対応
3.1 戦略とシナリオ分析
気候変動を企業の持続可能性に関わる重要課題と捉え、1.5℃シナリオ(IEA NZE、IPCC SSP1-1.9等)と4℃シナリオ(IPCC SSP5-8.5等)を用いた分析を実施。これにより、気候変動関連の移行リスクと物理リスク、および機会を把握し、戦略の強靭性を評価している。分析は、事業へのインパクトが大きい「店舗操業」と「商品調達」の2分野に重点を置いている。
3.2 気候関連のリスクと機会の財務的影響
2030年時点での気候関連リスク・機会が事業に与える財務インパクトを以下の通り評価している。
リスクおよび機会
| タイプ | 重要なリスク・機会項目 | (2030年 : 億円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 店舗 | 物流 | 1.5℃ | 2℃未満 | 〜4℃ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 移行リスク | 政策・規制 | 炭素の価格付けによるコスト増 ※1 | ◯ | ◯ | 353 | 341 | 227 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 電力政策・エネルギーミックス変化 | ◯ | — | 大 | 中 | 小 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 省エネ・再エネ技術の進展 | ◯ | — | 大 | 中 | 小 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 技術 | EV車両(物流)・EVインフラ(店舗)の普及 | ◯ | — | 大 | 中 | 小 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 市場 | 顧客ニーズ・行動の変化 | ◯ | ◯ | 小 | 中 | 大 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 原材料の生産減少、商品化コスト増加 | — | ◯ | 小 | 中 | 大 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| エネルギー価格高騰による収益減 ※2 | ◯ | ◯ | 1,099 | 1,099 | 1,099 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 評判 | 顧客の社会的意識の高まり | ◯ | ◯ | 小 | 中 | 大 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 社会ニーズに適した商品評価(購買行動変化) | ◯ | ◯ | 小 | 中 | 大 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| タイプ | 重要なリスク・機会項目 | 該当 | 財務インパクト (2030年 : 億円) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 店舗 | 物流 | 1.5℃ | 2℃未満 | 〜4℃ | ||
| 製品及びサービス | 顧客ニーズ・行動の変化 | ◯ | — | 小 | 中 | 大 |
| 社会ニーズに対応した商品開発 | ◯ | ◯ | 小 | 中 | 大 | |
| エネルギー源 | 脱炭素エネルギー導入によるコスト削減 ※4 | ◯ | — | 218 | 218 | 63 |
| 市場 | 防災機能の高い店舗を保有することによる市場評価増 → 投資家からの評価 | ◯ | — | 中 | 中 | 大 |
| 災害に強い商業施設 ※5 (電力確保、建物構造) | ◯ | — | 16 | 82 | 326 | |
| レジリエンス | 地域の防災拠点としての店舗活用 | ◯ | — | 中 | 中 | 大 |
注:表は主要項目を抜粋。インパクト評価の「大」「中」「小」は定性評価。
3.3 指標と目標
2018年に策定した「イオン 脱炭素ビジョン」に基づき、以下の目標を掲げている。
- 長期目標(2040年)
店舗で排出するCO2等を総量でゼロにする。 - 中間目標(2030年)
店舗使用電力の50%を再生可能エネルギー化する。
※この中間目標は、2023年度に国内事業所の再エネ調達率が55%に達し、7年前倒しで達成済み。
また、排出量の信頼性向上のため、Scope1, 2(主要連結子会社56社)およびScope3カテゴリ4(イオングローバルSCM㈱)について第三者検証を受審している。
4. 人的資本に関する考え方と戦略
4.1 基本方針:「教育は最大の福祉」
「小売業は人間産業」との理念のもと、「人間尊重」を人材育成の基盤としている。従業員一人ひとりの可能性を信じ、仕事や学びを通じて成長することを後押しすることが「最大の福祉」であると考え、自律的な成長を促す環境整備に注力している。
4.2 人材育成戦略
- 戦略的採用の強化
グループ共通の採用基準を用い、経営陣も関与して革新の原動力となる人材を獲得。 - 人材育成体系の構築
グループ共通の「期待人材像」を定義し、行動変容を促す教育プログラムを構築。若年層向けプログラムを3年間から5年間に拡充。 - 教育への積極投資
従業員の自律的な学びを支援するため、教育投資を拡充(2024年度実績:60億円)。 - キャリア自律の支援
「イオンキャリアアドバイザー」を養成し、全従業員のリスキリングを促進。 - 経営・専門人材の育成
次世代経営人材候補の育成プログラムや、デジタル人材(2025年度目標:2,000人)の育成を強化。
4.3 社内環境整備戦略
多様な人材が活躍できる環境が不可欠であるとの考えから、以下の取り組みを推進している。
- ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I) :従業員、家族、顧客の三者の満足を目指す「ダイ満足」を推進。
- 健康経営: 「イオン健康経営宣言」のもと、従業員と家族の健康増進に取り組む。2025年にはグループ60社が「健康経営優良法人」に認定。
- 賃金改善: パートタイマーの賃金を3年連続で7%引き上げ、国内の労働市場活性化に貢献。
4.4 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進
- 女性活躍: 連結ベースの女性管理職比率は28.4%(2024年度実績)。50%を目標に掲げ、「部長候補コース」等を新設し、パイプライン拡充を後押ししている。
- 障がい者活躍: 障がい者雇用率は3.05%(2024年度実績)で、法定の2.5%を上回る。早期に3.5%以上を目指す。
- LGBTQ+への取り組み: 性的指向や性自認等を理由とした差別を一切行わない方針を明確化。研修やアライ(支援者)育成、東京レインボープライドへの出展などを行っている。
5. 主要指標と目標
サステナビリティおよび人的資本に関する主要な指標と目標は以下の通り。
5.1 サステナビリティ・人的資本 統合目標
| 取り組み項目 | 指標 | 現在 (2023-24年度実績) | 目標 | 目標年度 |
|---|---|---|---|---|
| 脱炭素社会の実現 | 店舗で排出するCO2等を総量でゼロ | ― | 達成 | 2040年度 |
| 店舗電力の50%を再エネ化 | 55% | 50% | 2030年度 | |
| 資源循環 | 食品廃棄物削減(2015年比) | 37.9%削減 | 50%削減 | 2025年度 |
| 使い捨てプラ使用量削減(2018年比) | 12.7%削減 | 50%削減 | 2030年度 | |
| 理念浸透 | 基本理念への共感度(5段階評価) | 3.43 | 4.0 | 2025年度 |
| 働きがい | エンゲージメントB以上出現率 | 73.5% | 100% | 2025年度 |
| 入社5年目定着率 | 57.5% | 70%以上 | ― | |
| 多様性 | 女性管理職比率 | 28.4% | 50.0% | 2025年度 |
| 障がい者雇用率 | 3.05% | 3.5% | 2025年度 | |
| 経営幹部育成 | グループ経営者準備人数 | 36名 | 45名 | 2025年度 |
6. 従業員の状況とデータ
6.1 従業員数(2025年2月28日現在)
- 連結会社合計:
- 就業人員:168,001人
- 時間給制従業員(8時間換算):272,986人
- 提出会社(イオン㈱):
- 従業員数:490人
- 平均年齢:49.1才
- 平均勤続年数:17.8年
- 平均年間給与:9,471,912円
6.2 女性活躍と男女間の賃金差異
主要な連結子会社を含めた全体のデータは以下の通り。
| 指標 | 2024年度実績 |
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 28.4% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 82.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異 | |
| 全労働者 | 67.8% |
| 正規雇用労働者 | 79.4% |
| パート・有期労働者 | 122.2% |
注:賃金差異は、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で除した割合。
賃金差異に関する会社の補足説明
制度上の性別による処遇差はないものの、以下の要因により差異が生じていると分析している。
- 全労働者: 全従業員の約8割をパートタイマーの女性が占めており、多様な働き方を選択している割合が大きいため。
- 正規雇用労働者: 転居転勤の有無によって給与体系が異なり、全国転勤区分を選択している男性従業員の割合が多いため。
会社は、引き続き女性の活躍推進、マネジメント職への登用、支援体制の構築等に取り組む方針を示している。
7. 解説・考察:詳細動画(約25分)
8. ガイド:Q&A
以下の質問に対し、それぞれ2~3文で簡潔に答えなさい。
1 .イオンの「基本理念」とは何か、その3つの主要な要素を挙げて説明しなさい。
イオンの「基本理念」は、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する」ことです。これは、事業活動の根幹をなす考え方であり、サステナビリティ活動を推進する上での指針となっています。
2. イオンがサステナビリティ戦略で定めている7つの「重点分野(マテリアリティ)」のうち、3つを挙げなさい。
イオンが定める7つの重点分野には、「脱炭素社会の実現」「資源循環の促進」「生物多様性の保全」「コミュニティとの協働」「人権に配慮した公正な事業活動」「従業員の幸せの実現」「攻めと守りのガバナンス」があります。(このうち3つを挙げれば正解)
3. イオンは気候変動への対応として、店舗におけるCO2等排出量に関してどのような長期目標を掲げているか?
イオンは「イオン脱炭素ビジョン」に基づき、2040年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロにするという長期目標を掲げています。この目標達成のため、省エネと創エネの両面から取り組みを進めています。
4. イオンの人的資本に関する考え方の根幹をなす「教育は最大の福祉」とは、どのような意味か説明しなさい。
「教育は最大の福祉」とは、人間として成長することが従業員にとって最大の幸福であるという考え方です。この理念のもと、イオンは従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる教育環境を整え、自律的な成長を支援しています。
5. イオンのガバナンス体制において、「イオン・マネジメントコミッティ」と「取締役会」はそれぞれどのような役割を担っているか?
「イオン・マネジメントコミッティ」は、代表執行役などの経営幹部で構成され、サステナビリティに関する重要事項を議論・決議する機関です。一方、「取締役会」は、経営の基本方針や重要事項を決定・承認し、取締役および執行役の職務遂行を監督する役割を担っています。
6. イオンは気候変動のリスクと機会を分析するために、どのようなシナリオを参照しているか?
イオンはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)の報告を基にシナリオ分析を行っています。具体的には、1.5℃シナリオとしてNZEやSSP1-1.9、4℃シナリオとしてSSP5-8.5などを参照し、移行リスクと物理リスクを評価しています。
7. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進の一環である「ダイ満足」とは何か、その目的を説明しなさい。
「ダイ満足」とは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)が生み出す、従業員とその家族、お客さま、会社の3者の満足の実現を目指す活動の名称です。グループ全体でDE&Iに関する様々な活動に取り組んでいます。
8. イオンの「女性管理職比率」と「障がい者雇用率」に関する2025年度の具体的な目標数値を挙げなさい。
2025年度の目標として、「女性管理職比率」は50.0%、「障がい者雇用率」は3.5%を掲げています。
9. イオンの男女間の賃金差異について、正規雇用労働者間で差異が生じている主な要因は何か?
正規雇用労働者における男女間の賃金差異の主な要因は、賃金制度に性別による差はないものの、資格等級の高い男性労働者の割合が多いこと、また転居転勤の有無で給与体系が異なり全国転勤区分を選択している男性従業員の割合が多いためです。
10. イオンは温室効果ガス排出量に関して、どのような第三者検証を受けているか。検証範囲を2つ挙げなさい。
イオンは温室効果ガス排出量について第三者検証を受けています。検証範囲には、イオンおよび主要連結子会社56社のエネルギー起源CO2排出量(スコープ1およびスコープ2)と、イオングローバルSCM㈱の国内輸送に伴う排出量(スコープ3のカテゴリー4に相当)が含まれます。
9. イオンで働く際に調べておきたいこと
- イオンの「基本理念」が、サステナビリティに関する7つの重点分野(マテリアリティ)の具体的な取り組みにどのように反映されているか、複数の例を挙げて論じなさい。
- イオンは「教育は最大の福祉」という考えのもと、多様な人材育成方針を掲げている。これらの人材育成戦略が、企業の持続可能な成長と「従業員の幸せの実現」というマテリアリティにどのように貢献すると考えられるか、具体的に説明しなさい。
- イオンの気候変動戦略における「移行リスク」と「物理リスク」の評価について説明しなさい。特に、参照しているシナリオと、それが店舗操業や商品調達に与える財務的インパクトの評価方法について詳述すること。
- イオンのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進の取り組みは、女性活躍、障がい者活躍、LGBTQ+支援など多岐にわたる。これらの取り組みが、資料に示されている「労働者の男女の賃金の差異」といった課題の解決にどのように寄与しうるか、あなたの考えを述べなさい。
- イオンのガバナンス体制(指名委員会等設置会社、取締役会の構成、リスクマネジメント委員会など)は、サステナビリティ活動、特に気候関連課題や人権デュー・ディリジェンスといった複雑なリスク管理において、どのように機能していると評価できるか論じなさい。
10. 重要用語集
| 用語 | 定義 |
| 基本理念 | 「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」というイオングループの根本的な考え方。サステナビリティ活動の推進基盤でもある。 |
| マテリアリティ | イオングループが事業を通じて取り組むべきサステナビリティ上の重要課題。事業との関連性と社会への影響度の観点から7つの重点分野が特定されている。 |
| 指名委員会等設置会社 | 会社法に規定される企業統治体制の一つ。取締役会が執行役に業務執行権限を大幅に委譲し、迅速な意思決定と経営の監督機能の強化を図る体制。 |
| イオン・マネジメントコミッティ | 代表執行役をはじめとする経営幹部で構成される経営会議。サステナビリティに関するリスクや機会などの重要事項を多様な観点から議論、決議・承認する。 |
| イオン脱炭素ビジョン | 2018年に策定された、イオングループの脱炭素化に向けた方針。「店舗」「商品・物流」「お客さまとともに」の3つを柱とし、温室効果ガス排出削減を目指す。 |
| 人権デュー・ディリジェンス | 「イオンの人権基本方針」に基づき、サプライチェーン上で関わる取引先や地域の人々を含む、グループ全体の人権課題を抽出し、対応状況をモニタリングするプロセス。 |
| 教育は最大の福祉 | 従業員の人間的成長が最大の幸福であるという、イオングループの人材育成に関する基本的な考え方。 |
| ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I) | 多様な人材が活躍できる環境を整備すること。イオンでは、女性活躍、障がい者活躍、LGBTQ+への取り組みなどを通じて推進されている。 |
| ダイ満足 | DE&Iが生み出す、従業員とその家族、お客さま、会社の3者の満足の実現を目指す活動の名称。 |
| 健康経営 | 従業員が心身ともに健康であることが、生産性や創造性の向上、ひいてはお客さま満足の向上につながるという考え方。イオンは2016年に「イオン健康経営宣言」を発表している。 |
| シナリオ分析 | 気候変動が事業に与える影響を評価するための手法。イオンでは、1.5℃と4℃の世界に至るシナリオ(IPCCやIEAの報告を参照)を用いて、移行リスクと物理リスクを把握している。 |
| 人的資本 | 企業の発展力は人であるという考えに基づき、従業員を企業の重要な資本と捉える概念。イオンでは、人材育成や環境整備への投資を通じて、持続可能な成長を目指している。 |
| UAゼンセン | 正式名称は「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」。イオングループ労働組合連合会が加盟している産業別労働組合。 |
| スコープ1、2、3排出量 | 温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告における区分。スコープ1は事業者自らの直接排出、スコープ2は他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出、スコープ3はそれ以外のサプライチェーンにおける間接排出を指す。 |

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